喫茶店でアッサムを選ぶ人は、だいたい常連
──紅茶の注文ににじむ、その店との距離感について
喫茶店でメニューを開いてすぐに迷いなくアッサムを選ぶ人は、だいたい常連に見えます。
もちろん本当に常連かどうかは分かりません。ただ、そう思わせる何かを持っているとでも言いましょうか。

余程の紅茶専門店でもない限り、紅茶の選択肢はそれほど多くないのが普通ですよね。ダージリン、アッサム、アールグレイ、これらは喫茶店における定番の紅茶メニューと言えるでしょう。

アッサムは、紅茶の中では少し地味な立ち位置にあります。
アールグレイのような分かりやすい香りもなく、ダージリンのような繊細さや季節感を語られることも少ないです。しかし、アッサムは、ミルクとの相性は抜群です。
アールグレイはミルクを加えると香りが前に出すぎ、ダージリンは繊細さが薄れてしまうことがあります。その点、アッサムはコクと渋みが土台にあるため、ミルクを受け止めても輪郭を失いません。
甘さを足しても崩れず、量や濃さに神経質にならなくていい。ミルクティーとして完成する前提で存在しているような安定感があります。だから喫茶店では、考えずに頼める紅茶として選ばれやすいのだと思います。

アールグレイが印象を残す紅茶だとすれば、ダージリンは味わう紅茶です。そしてアッサムは、そこにあることが自然な紅茶だと言えるでしょう。主張は控えめですが、日常の中に静かに馴染む強さを持っています。
アッサムを選ぶ人は、紅茶に期待しすぎていません。味で感動したいわけでも、写真を撮りたいわけでもないのです。ただ、この店でこの時間を過ごすために、一番都合のいい飲み物を選んでいるだけです。紅茶は目的ではなく、居場所を成立させるための道具になっています。
だから、喫茶店でアッサムを選ぶ人は、だいたい常連に見えるのだと思います。喫茶店の常連というのは、メニューを端から端まで眺めることはなく、冒険もしないことが多いです。失敗しない選択を知っていて、長居の仕方を知っている。その振る舞いこそが、常連らしさを醸し出しているのです。
今日もどこかの喫茶店で、静かにアッサムが注がれています。
それは特別な一杯ではありませんが、その店に馴染んだ人の時間を、確かに支えている一杯なのだと思います。
